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「介護と仕事の両立は無理だ」と本気で思った日がある。
父が脳梗塞で倒れた2022年11月、僕は神奈川の中堅メーカーに勤める39歳の会社員だった。営業職で外回りが多く、残業も月40時間前後。父の退院後の在宅介護を誰が担うか、家族会議で結論が出ないまま時間だけが過ぎた。
結局、実家に近い僕が主たる介護者になった。退院は入院から2ヶ月後。その間に僕がやったのは「仕事を辞める準備」だった。
でも辞めなかった。今も同じ会社で働いている。理由は3つある。
理由1:介護休業制度をフルに使った
介護休業制度を知ったのは、たまたま会社の就業規則を読み直したときだった。
雇用保険の被保険者であれば、対象家族1人につき通算93日間まで、3回を上限として分割取得できる。そして休業中は「介護休業給付金」として休業前賃金の67%が支給される。
僕の場合、月の手取りが約29万円だったので、67%の約19万円が支給された。家賃・光熱費・食費などの固定費を考えると厳しい金額だが、「仕事を辞める」よりはずっとマシだった。
最初の1回目(30日間):父の退院準備・ケアマネとの初回打ち合わせ・介護体制の構築
2回目(30日間):父の状態悪化で介護度が変わったタイミング(約4ヶ月後)
3回目(33日間):母が体調を崩して一時的にダブル介護になったとき
93日という日数は「介護を完了させるための期間」ではなく、「介護の体制を整えるための期間」だと法律の説明にもある。つまり、在宅介護の仕組み(デイサービス・ヘルパーの手配)を整えるための時間として使うのが正しい使い方だ。
申請は総務に「介護休業を取得したい」と口頭で伝えて、書面で申請するだけ。うちの会社では特に問題にならなかった。制度を使うことへの遠慮は要らない。これは権利だ。
理由2:デイサービスと訪問介護で「介護のある日常」を設計した
介護休業中にやるべき最重要タスクは、介護保険サービスの体制を整えることだ。これができれば、介護に割く時間は大幅に圧縮できる。
ケアマネさんと相談して組んだケアプランは次の通りだ。
- デイサービス:月・水・金(9時〜16時)
- 訪問介護(生活援助):火・木(各45分)
- 訪問リハビリ:火(週1回・40分)
このスケジュールが組めたことで、平日のほとんどを父が自宅以外か、ヘルパーさんがいる状態にすることができた。僕が仕事中に「今頃父は何をしているか」という心配が格段に減った。
デイサービスの送迎は施設が行う。朝8時50分に迎えに来て、16時15分に返してくれる。この間は基本的に家族が不在でも問題ない。
訪問介護のヘルパーさんは同じ担当者が固定でついてくれた(ヘルパー事業所に交渉した)。顔見知りになることで父も安心して任せられるようになった。
介護が「24時間365日家族が見ている」状態から「プロに任せる時間を最大化する」状態に変わったことで、仕事に集中できる時間が生まれた。
理由3:リモートワーク交渉を正面からやった
会社への交渉が最も難しかった。
2022年当時、うちの会社は週1〜2日のリモートワークを実施していたが、営業職は原則対象外だった。僕は直属の上司に「介護を理由にリモートワークの割合を増やしたい」と正直に話した。
最初は「営業はお客様と会ってなんぼだからな……」と渋られた。そこで出した提案は3つだ。
- 担当顧客のうち既存顧客・定期連絡案件は電話・メール対応に移行する(訪問件数を週10件→6件に減らす)
- 移動時間の長い遠方顧客は他のメンバーに引き継ぐ代わり、オンライン商談が得意な顧客を多く担当する
- 週2〜3日はリモートワークで対応できる業務体制を自分で作る
交渉の結果、週3日リモート・週2日出社という形が認められた。完全に希望通りではなかったが、大きな前進だった。
このとき学んだのは「介護で大変だから配慮してほしい」という訴え方ではなく、「こういう業務設計をするから、これだけの働き方を認めてほしい」という具体的な提案をすることだ。感情より論理で動いてもらった方が話が早かった。
仕事と介護の両立で実際に使った時間の記録
1週間の時間の使い方を整理すると、こうなっていた。
| 時間帯 | 平日(デイサービスあり) | 週末 |
|---|---|---|
| 6:00〜8:45 | 父の朝食・服薬確認・送り出し | 父の朝食・服薬確認 |
| 9:00〜16:00 | 仕事(リモートまたは出社) | 父と過ごす・通院同行など |
| 16:15〜18:00 | 父の帰宅対応・夕食準備 | 父の入浴補助 |
| 18:00〜21:00 | 夕食・片付け・仕事の続き | 自分の時間 |
| 21:00〜23:00 | 自分の時間 | 自分の時間 |
日中の7時間、父をデイサービスに任せられる日は、ほぼ普通のサラリーマンと変わらない生活ができた。逆にデイサービスがない週末は介護中心になる。週末の介護密度が高い分、平日の仕事に集中できた。
両立できなかった時期のこと
正直に書く。2023年の春から夏にかけて、父の体調が不安定な時期があった。デイサービスを休む日が週2〜3日になった。その時期は仕事のパフォーマンスが落ちた。上司にも「最近どうした」と声をかけられた。
そのときやったのは、週1回のショートステイ(2泊3日)の追加だ。父の体調は不安定でも、ショートステイの施設なら医療職員がいて安心できる。これを追加することで、週のうちの2〜3日は完全に仕事に集中できる時間が確保できた。
介護の体制は一度作ったら終わりではない。状態が変わるたびに見直して組み替える必要がある。そのたびにケアマネさんに相談すること——これが両立の核心だと思う。
介護離職を避けるために知ってほしいこと
厚生労働省の調査では、年間約10万人が介護を理由に離職している。うち女性が7割で、離職時の平均年齢は50歳前後。キャリアの中盤で辞めることになると、再就職は難しく老後の資産形成にも大きな影響が出る。
介護休業制度、高額介護サービス費、デイサービス・ショートステイの活用——これらを知っているかどうかで、選択肢は大きく変わる。
もし「もう限界かも」と感じているなら、まず会社の総務か上司に「介護の状況を相談したい」と声を上げることが最初の一歩だ。話してみると、意外と制度を使う道が開けることがある。
僕はあのとき辞めなくてよかったと思っている。
※本記事は個人の体験に基づく情報提供であり、医療的助言ではありません。健康上の懸念がある場合は、医師にご相談ください。
